ケイン号の叛乱
NYでデビッド・シュワイマーが演るお芝居『ケイン号の叛乱』の映画版です。
デビッドが演じるのは、駆逐艦ケイン号のクィーグ艦長を任務中に解任し、
自ら指揮を取ったことで反逆罪を問われて
軍法会議にかけられた副艦長の弁護人、グリーンウォルド中尉。
舞台では、かつてヘンリー・フォンダがこの役を演じたそうです。
圧倒的に不利だった軍法会議で、
クィーグ艦長の精神異常による任務不履行と副艦長の無実を証明するという役柄。
今回観た映画版ではホセ・フェラー(ジョージ・クルーニーの叔父なんだって、
知らなんだ〜)が演じてました。
とまあ、戯曲はグリーンウォルド中尉を主人公に描かれているらしいんですが。
映画のほうの主役は、何といっても、ハンフリー・ボガードのクィーグ艦長!
すごくいい意味で、裏切ってくれました。
いい加減でやる気のない前任の艦長のあと、颯爽と現れたときのクィーグ艦長は、
いかにも、いつものハンフリー・ボガードな、ちょっと気障で切れ者の、
有能そうなベテラン海軍士官。
……なのに。
これが、少しずつ少しずつ、横暴で、臆病で、偏執狂的な姿を露にしていくんです。
強迫観念に取り憑かれたような喋りっぷり、狂気をはらんだ目つき、うすら笑い。
プライドと臆病の波が交互にやってくるような、ころころと変わる表情。
ボギー、こえ〜よぉ〜〜
と背筋が凍るようでした。
いや、実際ね、「実は怖い顔なんだわ、この人」と今回発見しましたですよ。
この役をハンフリー・ボガードがすごく演りたがった、というのはわかる。
部下の立場から考えたら
「絶対、こんな上司ヤダ〜〜」ってすたこらと逃げたくなるんですが、
敢えてちょこっとしか語られないクィーグ艦長の過去、
少しずつ彼を蝕んでいったに違いない、彼が遭遇した様々な極限体験を
見事に観る側に想像させる演技といいましょうか。
観ていて重苦しくなるものがありました。
原作読むのも(540ページ、重い
)楽しみ。
でも、なんたって俄然、舞台が楽しみにっ。
おそらく時代を超越する、不朽の名作なのでしょうが、
今、こんな時代のアメリカで再び舞台に上げられるということには、
きっと大きな意味やメッセージが込められるんだろうし。
……な〜んて。
デビッドが弁護士役、しかも主役ってだけでもう充分楽しみですけどね。
全然話は飛びますが、シュワイマー家は、
お父さんもお母さんもお姉さんも弁護士の、弁護士一家。
「家族に弁護士役のアドバイスとかもらっちゃったりなんかするのかしらん」
てな、あまりにも芸のない想像もひとり楽しんでいる私でございました。